2010年09月14日

3.継ぎ手と仕口

3.継ぎ手と仕口

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  木を組むことは、木のクセを組むこと。これも宮大工の口伝として伝わっているよく知られる言葉です。木はどんなに乾燥した材を用いても必ず時間経過とともに動きます。いろいろな継ぎ手や仕口は、この木のクセを押えこむようによく考えられています。見えないところに細かな細工しているのは、このクセが後に建物に悪さをしないようにするための工夫なのです。
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 手で木を加工するということは、一本一本を大工棟梁がチェックして木のクセを読みながらその材に適した材配置、材の墨付け刻みを行うということです。

 ここでも単にその接合部分だけを考えるのではなく、それ以前に材の長さや断面、見え方など架構として全体バランスを考えた上での判断となるわけです。材を押さえ込む、材を跳ねだす、差す、抜く、締め込むなど材を見ながら、臨機に判断することも必要となるでしょう。
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 現代では、自動、あるいは半自動で機械加工を行うプレカット工場の利用がシェア8割を超えています。その基本は伝統的な継ぎ手と仕口の考え方が原理となっていますが、機械で加工できる簡便な接合の範囲に限られ、省力化や簡略化、加工の集約化の方向を目的にした仕組みであるだけに、木造技術の発展に対する課題が残っているように思われます。機械化は時代の趨勢ですが、その木を組む原則が変わることはありませんから、木を読み適切な判断が要求されますが、今のセンサー技術は手で考える領域を目指してはいないようです。

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 木を組むための継ぎ手や仕口にはいろいろな形がありますが、その基本を類型化した形はそんなに多いものではありません。この部分の判断は木造の建物では大工棟梁たちの独断場と言えるところでしょう。

その場所に応じた継ぎ手・仕口の選択枝というのは複雑な架構でないかぎり、さほど多くのものがあるわけではありません。むしろ、それを選択をする場合の必要条件が何であるのかを見極めることが重要です。これは最終的には実際の材料の長さや太さ、木の目の状況、必要な強度や粘り強さ、耐久性の確保など大工棟梁の経験からくる判断などなどで、図面で考えているだけでは決めきれない場合もあります。自然素材である一本一本異なる木材は、最終的にはその材に目にして考えてあげなければなりません。 
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 設計する立場としては、設計上の考え方を提示し、現場で棟梁と材を見ながら打ち合わせすることになります。考えが一致する場合もあれば食い違う場合もあり、緊張感を持ったやり取りをすることもありますが、建物にとって最適解を求めるための検討です。棟梁からは現場ごとで、毎回さまざまなヒントをもらい、手で考える棟梁たちの工夫を現場で実現できるよい機会にもなっています。
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  木造住宅[私家版]仕様書(P96)のオリジナル原図です。田の字型の間取りで、柱の各部に胴差や梁などの横架材がどのように取り合うのかを表しています。実際にはさまざまに条件もありますが、この図にあるような組み方で主要部分の構造は概ね構成できるでしょう。

伝統構法で組まれた架構
  組みあがってしまうと継ぎ手仕口の細かな細工は分からなくなります。むしろ、見えないところに気を使い、その場に応じて工夫がなされています。建物は完成して住まうことが目的ですが、その工事経過の中で骨組を組み立てる建て方に立ち会えると、この家のために棟梁がどういった工夫したかを知ることができます。受け継がれてきた匠の技は、この現場に携わった次の若手に受け継がれていくことでしょう。

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posted by 太郎丸 at 18:30| 木の家考 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする