2010年09月15日

2.手で考える経験のが木を扱う技術の基本

2.手で考える経験のが木を扱う技術の基本

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  木を扱う技術は知識だけで習得できるものではありません。実践の中で培われた経験を基本とした知恵がとても大切で、大工棟梁たちが木造建築の担い手となっているのです。そこではやってよいことを知るより、やってはいけないことを知ることが求められます。

 木は一本一本同じように見えても、その育ち方で、木目や色合いは異なり、組上げた後に時間経過とともに捻じれたり、反ったりもします。それをあらかじめ予測し、組む場所によってはその動きを拘束したり、場合によっては、力をお互いに相殺しあうように組むことで、クセを利点にしてしまうことが経験を踏まえた大工棟梁の知恵といえるでしょう。
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    木には3つの方向性があり、それ
    ぞれに性質が異なり、乾燥による
    収縮率も大きく違っている。
  木のクセは、使うときに乾燥の状態があまりよくない木材が時間経過とともに乾燥していく過程で顕著に現れます。ですから、乾燥状態のよい材料を使うということも棟梁の目利きにかかってきます。
 しかし、単に含水率で何%以下の材料でないとダメと評価することではなく、その木の目の細かさ、春材や秋材の密度の高さ、芯の偏心のしかたなどを見極め、手で触れたり、持ち上げて重さを確認したりすることで、使うのに適しているかどうかなども判断基準になるでしょう。こういった、経験に裏打ちされた判断が木を扱うときにはとても大切なことあり、数値だけで評価するだけでは、木の良さを引き出すことはできなません。狂うなら狂うことを想定した木材の使い方ということもあるでしょう。木の乾燥状態の計測器の数値はひとつの指標ではあっても総合的に判断する視点を忘れてはいけません。
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  スギ4寸角材といっても小口を見た
  だけでも1本1本異なることが分か
  る。
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 太い材料は完成後も動き続けるため、その動きを押さえ込むような木組みで対応する。

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  この言葉は、ある棟梁から聞いた口伝です。元木というのは、木の根の方を指し、裏木とは梢側(末)のことを言うそうです。一般に、元木の方が梢側よりも心材の量が多く木の密度が高い傾向にあります。継手を作るときには、元木側が受け側(下木)となるようにすることを原則とします。これを間違えてしまうと、弱い継手となってしまい、構造上の問題となってしまいます。こういった表現を用いることも木を扱う職人の知恵として生きているのだと思います。 s02-02.jpg
  「木は対等に組む」これは、力のバランスを考えるということと理解しています。たとえば、継ぎ手や仕口のところを金物で補強することがありますが、あまり金物が強すぎると木が裂けたり、割れたりなりやすくなり、本来の補強目的の効果が出せないことになってしまいます。木にはその場所、その目的に適した接合を考えるべしという知恵です。そのように考えると、現在はとにかく金物で留め付けることが当たり前となった造り方には、木と金物との力のバランスに対して注意が足りないものも見受けられます。

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    同じ形をしている継ぎ手でも下木、
    上木では元末の使い方がある。
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 力のバランスは接合などの部分的な関係ばかりでなく、建物全体に対しても同様のことが言えます。軸組みの造り方や耐力壁の配置など部分的に偏って強くすることは、かえって問題を生じる危険性が高まります。南面に広く開口を取りたいあまりに北側に耐力壁をたくさん配置して壁の量だけは満足させても力のバランスに大きな偏りのあるでは建物になってしまうことは望ましくありません。全体の力のバランスは常に考慮することが求められ、大工棟梁たちの知恵をけして忘れてはいけません。
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posted by 太郎丸 at 15:55| 木の家考 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする